結論から言います。
玉川学園前は「必ず皆さんにとって住みやすい街」とは言い切れません。
「落ち着いた住宅地」として評価されることが多いエリアですが、それがそのまま「住みやすさ」に直結するかどうかは、住む人の価値観や生活スタイルによって大きく変わりますよね。まぁこれは玉川学園に限ったことではありませんが…
ズバリ向いている人:静かな環境で、家族時間を重視したい人
ズバリ向いていない人:利便性や駅近生活を優先したい人
なぜそう言えるのか。地元ならではの体感をもとに、まずはこの街がどのようにして生まれたのかという歴史から紐解いていきます。
■ そもそも、玉川学園前はどうやって生まれた街なのか?
玉川学園前は、もともと「何もなかった山林と農地」でした。かつては「芝生(しばお)」と呼ばれた、蛙やマムシが多いだけの何もない土地だったとか!
しかし、この地を大きく変えたのが、1929年(昭和4年)の玉川学園創立です。
創立者の小原國芳さんは、成城学園で校長を務めていた42歳のとき、「受験教育ではなく、真の人間教育をしたい」という強い思いで玉川学園の建設を決意。無一文からのスタートで多額の借金をし、東京府南多摩郡町田町一帯の土地(現在の町田市)を買収しました。
その広さは実に約336万㎡!その約8割にあたる260万㎡を宅地造成して分譲し、残りを学園の敷地にするという、当時としては壮大な計画でした。さらに小田急電鉄と交渉し、駅の敷地・駅舎を玉川学園側が提供する条件で「玉川学園前駅」を新設することに成功。土地分譲の利益を学校運営にあてるという、学園経営と街づくりを一体化させた前例のない手法で、この街は誕生しました。
地名が「玉川学園」となったのは1967年(昭和42年)のことで、それ以前は「本町田」「芝生」などと呼ばれていたとか。
■ 文化人・芸術家が集まって生まれた「文教地区」
玉川学園が分譲した住宅地には、「教育と文化の共同体をつくる」という学園の理念に賛同した人たちが次々と移り住んできました。学者、芸術家、画家、音楽家、漫画家……そういった文化人たちが集まったことで、この街は独特の品格と知的な雰囲気を持つようになっていきます。
たとえば、玉川学園8丁目に「のらくろ坂」という坂があります。これは漫画「のらくろ」の作者・田河水泡氏がかつてこのエリアに居住していたことから名付けられました。また、『沈黙』や『侍』などで知られる直木賞作家・遠藤周作氏も、1963年から1987年まで24年間、玉川学園に居住し、多くの名作をここで執筆しました。
こうした文化人が多く住んでいた背景もあり、玉川学園エリアは「文教地区」に指定されています。文教地区建築条例によって、パチンコ店や風俗店、大型商業ビルなどの建設が制限されており、現在も大学教員・漫画家・画家・音楽家といったクリエイターや研究者が多く暮らすエリアとして知られています。
■ 文教地区指定が子育て環境に与える影響
「文教地区」という指定は、子育て世帯にとって非常に大きな意味を持ちます。
繁華街的な施設が制限されているので、夜間の騒音や治安の面でのリスクが低く、子どもが安心して育てる環境が整っています。また、街に住む人々の民度が高く、地域コミュニティへの意識が強い傾向にあることも、子育て世帯にとっては大きなプラスです。
幼稚部から大学院まで一貫した教育が受けられる玉川学園(約1万人が在籍)が近くにあることで、教育への意識が高い家庭が自然と集まるエリアでもあります。「子どもをどんな環境で育てるか」を真剣に考える親御さんにとって、この街の文化的な土台は、数字には表れない大きな資産と言えると思います。
では「必ず皆さんにとって住みやすい街」ではないとはどういうこと?
① 生活環境:静かだが、「便利」とは別物です
玉川学園前の最大の特徴は、住宅地としての落ち着きです。駅周辺に過度な商業施設はなく、街全体に穏やかな空気が流れています。
ただし「静か」と「便利」は直結しないので、そこは要チェックです。
【良い点】
・騒音が少なく、夜も静か
・子育てする環境として安心感がある
・街全体にゆとりがある
【気になる点】
・買い物施設は限定的
・外食や娯楽の選択肢は少ない
・「駅前完結型」の生活は難しい
② 地形:坂が、生活の質を左右する
玉川学園前で最も見落とされがちなのが「坂」の存在です。この街はもともと丘陵地を切り開いてつくられたため、場所によっては日常的にアップダウンが発生します。
影響するポイント
・通勤・通学時の体力的な負担
・ベビーカーや自転車での移動
・将来的な高齢期の生活
判断のポイント
「徒歩○分」という数字よりも、「坂あり徒歩○分」かどうかで、日々の体感は変わります。物件を検討する際は現地で実際に歩いてみてくださいね。
③不動産視点:資産性は「安定型」
玉川学園前は、爆発的な価格上昇が期待できるエリアではありません。一方で、住宅地としての需要は一定あり、急落もしにくい性質を持っています。
特徴
・大きく上がらないが、大きく下がりにくい
・ファミリー層の需要が中心
・坂の有無・駅距離によって、同エリア内でも価値差が大きい
判断のポイント
「投資」ではなく「居住満足度」で考えるエリア。売却時の出口を重視するなら、個別の立地条件を慎重に見る必要があります。
④最後に:向いている人・向いていない人
【向いている人】
・静かな住環境を最優先にしたい
・子どもの教育環境を重視したい
・家族との時間を大切にしたい
・車移動を前提にできる
・文化・芸術への関心が高い
【向いていない人】
・商業施設の多い利便性を重視する
・坂のない平坦な場所に住みたい
・短時間での都心アクセス
玉川学園前はとても人気がある街です。
1929年に「理想の学園都市」として生まれ、文化人や芸術家が集い、文教地区として発展してきたこの街は、「教育・静寂・品格」という軸で見れば、首都圏でも稀有なエリアと言えます。
ただし、何を生活の優先順位にするか?によってその評価も変わります。
「静けさを取るか、利便性を取るか」お客様の望まれている生活・価値観に、この玉川学園前エリアが適しているかどうか、気になる方はいつでもお気軽にご相談ください!
